第94章 成長
「大丈夫、そんな大きな声を出さなくてもちゃーんと聞こえてるよ。…またお腹が空いたみたいです。」
杏「大食らいになるな。」
「声が大きくて大食らい…。注意されれば素直だけど元気が有り余ってて運動神経もいい、か。本当に杏寿郎さんみたいな子達ですね。」
杏「うむ。妹をきちんと守ってくれるだろう。」
「そうですね。元気で素直な慶寿郎と悠寿郎、動きはおっとりしてるけどしっかり者の彩火…みんな可愛いなあ。」
そう言いながら桜が再び慶寿郎と悠寿郎を寝かせると、いつの間にか隣に来ていた杏寿郎が彩火の頬を撫でた。
「あっ、杏寿郎さん。体は休めるって約束をしましたよね。」
杏「その約束は明日からだ。……やはり君に似ているな。これからは君だけでなく彩火にも悪い虫が付かないように気を付けなければ。」
それを聞いて桜は目を丸くさせた後おかしそうに笑う。
「私はもう何もありませんよ。」
腹が大きくなってから桜は杏寿郎とではなく瑠火と2人で歩いている時にも男に声を掛けられなかった為 もう自分はそういった対象ではなくなったのだと思っていたのだ。
一方、桜がどうしてそう思い至ったのかを察した杏寿郎は呆れた様子で息をつく。
杏「君は勘違いをしている。妊婦を誘う男はいないだろうが人妻を狙う男はいるのだぞ。」
「………………………。」
久しぶりにそんな注意をされた為か桜は首を傾げて固まった。
杏「君は綺麗で愛らしい。」
固まる桜に杏寿郎はもっと分かり易くそう断言する。
すると桜は久しぶりに真っ赤になった。