第94章 成長
「もう嫉妬しているのですか?まだ1ヶ月の赤ちゃんですよ。」
杏「だが…、俺に似た男だ。」
それを聞いて桜はまた笑った。
「悪いお父さんです。太い眉もまだ薄いような子達に嫉妬するなんて。」
杏「むぅ。」
「分かりました。お部屋は一緒にしましょう。でも起き上がらないで下さい。せめて体は休めてくれないと私の気も休まりません。」
杏「………分かった。」
杏寿郎は渋々と頷くと慶寿郎の頬をむにむにと優しく突付く。
すると慶寿郎は杏寿郎によく似た綺麗な瞳を杏寿郎に向けた。
「そっくりですね。綺麗な目…。」
杏「君が惚れた目は俺のだけだろう。」
まだそんな事を言われると桜は堪え切れずに笑いながら杏寿郎を布団の中へ押し込む。
「もちろんそうですよ。似てても違います。ただ貴方に似ているので愛おしいんです。それに瞳だけで言えば彩火も似ていますよ。」
そう言われると流石に彩火には嫉妬しない杏寿郎はグッと言葉を詰まらせた。
彩火の瞳は確かに杏寿郎と同じ金と赤の鮮やかな色であったが、目自体は桜に似ている。
少しおっとりとした動きと顔のパーツから桜に似たのだろうと杏寿郎だけでなく瑠火や槇寿郎、勇之、由梨も喜んでいた。
そんな彩火の頭を優しく撫でていると慶寿郎と悠寿郎が大きな泣き声を上げる。