第94章 成長
それから桜を取り巻く世界は目まぐるしく回り、あっという間に1ヶ月が経った。
3人の世話をしてすぐ確かになった事は悠寿郎が名前と異なってやはり全く悠々としていないという事だ。
そしてやはり腹が減った時の泣き声は慶寿郎、悠寿郎、共に随分と大きく、手足をバタつかせるようになるとその動きもかなり激しい。
しかし腹が減った時以外ではあまり泣かず、桜がこまめにおむつを確認する必要がある程我慢の利く子達であった。
食い意地だけ張っているのだろう。
2人に対して彩火は大人しい。
髪も目も金と赤色だが顔はそこそこ桜に似ていて 心配していた眉毛も普通の太さだ。
そして必要な時だけ泣き、桜が気付いて近付けばそれだけで泣き止む。
「彩火はしっかり者だねえ。」
桜は3人分の夜泣きにも辛抱強く耐え、弱音は一切言わなかったし 疲れも表に出さなかった。
それでもネットで調べて大変さを知っていた杏寿郎はとても心配し、夜中でも桜と共に起きたし 世話をしている間はずっとくっついて回った。
「杏寿郎さん。私は時間がたくさんあるので構わないんですよ。杏寿郎さんはお仕事が大変でしょう。やっぱり明日からは別室で寝…、」
杏「駄目だ。別室だろうと君の体が心配で寝付けそうにない。それに子供が出来ても構うと言っただろう。放ったらかしにするつもりか。」
桜はその言葉の意味が一瞬分からなかったが、すぐに "桜が杏寿郎を構う構わないの話" をしているのだと気が付き思わず笑い出す。