第93章 念願の
「慶寿郎…っ!!」
先に彩火が出てくる可能性もあったが、桜は今出てこようとしているのが男の子だと確信してそう言った。
一方、それを聞いた先生は笑い、杏寿郎も眉尻を下げて微笑む。
杏「俺は『痛い、辛い!』と言わせたかったのだが子供の名を呼ぶとは君らしいな。」
そう言いながら杏寿郎は桜の汗を丁寧に拭った。
杏「よく頑張っている。君は偉いぞ、昔からそうだ。前向きでひたむきで本当に良い子だ。その調子だぞ。」
先「煉獄さん、本当に初産ですか?お父さんの言う通り本当に上手ですよー。」
そうして桜は2人に褒められながら必死に3人産みきった。
産まれた順は桜が予想した通り初めが慶寿郎、そして次はまた男の子であった為 悠寿郎、最後に彩火だ。
彩火は比較的大人しかったが、ゆったりとした子になる筈の悠寿郎の産声は慶寿郎と同様に非常に大きく、そして動きも激しかった。
杏「桜、頑張ったな。…頑張ったな。本当によくやった。偉いぞ。」
そう言う杏寿郎は疲れて朦朧としている桜の頬を優しく何度も撫でて労う。
(杏寿郎さん…1度も『頑張れ』って言わなかったな……。)
そう思うと自身が既に頑張っている事を認めてくれていたのだと桜は嬉しく思って微笑んだのだった。