第93章 念願の
槇「瑠火、桜は…大丈夫なのか……。」
瑠「至って普通の陣痛です。不安がらせるような言葉は謹んで下さい。」
槇「う…。」
桜と両親を乗せた杏寿郎が運転する車は15分と少しで病院に着いた。
そしてその後少し遅れて桜の両親も到着する。
杏寿郎は前もって立ち会い出産を強く希望していた。
(杏寿郎さん、心配がるんじゃないかな…大っきな声で応援してくれるのかな…。)
分娩室へ運ばれながら桜はそんな予想をする。
しかし桜の予想とは異なり、杏寿郎は桜が辛そうにしても顔を青くする事なく 只ひたすら真っ直ぐに桜を見つめ、手をしっかりと握り、『大丈夫だ、その調子だ。』と落ち着いた声を出し続けた。
先「上手ですねーその調子ですよー。」
敢えて柔らかい声色を出す先生の指示に従い、桜は呼吸を続ける。
杏(普通は堪らず声を上げると聞いたが…桜は何故何も言わない。痛みを耐える事に慣れているからか。)
杏「桜、桜。聞こえるか。声を出して良いんだぞ。」
そう言われると桜は一杯一杯な頭の中でその言葉を理解し、口を開いた。