第93章 念願の
瑠「三つ子であるのにここまで本当に順調でしたね。お産は何があるか分からないのでまだ油断してはなりませんが。」
杏「桜の腹は非常に丈夫に出来ているのです。」
瑠「………何故それを杏寿郎が知っているのです。」
杏「……………………………。」
流石に『前世ではそこを使って愛し合っていた』等と母親には明け透けに話せず、杏寿郎は誇らし気な笑顔を浮かべたままピシッと固まってしまった。
「にゅ、入院の準備もばっちりですね!」
苦しいと分かりつつ桜は慌てて話題を逸してみる。
すると意外にも瑠火は食い下がらずに桜の話題に乗ってくれた。
瑠「陣痛が来たらすぐに言うのですよ。」
「はい。ありがとうございます。」
予定日は12月上旬、寒い時期だ。
桜を取り巻く面々は桜が体を冷やさないように手厚くサポートをしていた。
そうして皆が桜の出産に備えていた頃、とうとうその日がやって来る。
それは出産予定日より5日だけ早い、幸運にも杏寿郎が居る日曜日の午前だった。
杏「君は本当に優秀だな!!日曜を選んでくれるとは!!!」
瑠「杏寿郎、声が大きいですよ!桜さん、大丈夫ですからね。」
桜は腹に手を当てて目をぎゅっと固く瞑りながら瑠火の言葉にだけ頷く。