第93章 念願の
(見えないけれど僅かに生えている筈の髪の毛は金色になっているのかな…。眉毛は…よく分からないや。)
「眉毛まではチェック出来ませんでしたが表情が動いていて可愛かったです。」
杏「うむ!愛らしかったな!!彩火の眉毛もきっと大丈夫だ!!」
桜は笑顔で返事をすると自身を過保護に抱える杏寿郎を少し申し訳なさそうに見上げる。
腹が大きく膨れ、重くなった桜はもう妊娠から36週目、臨月を迎えた立派な妊婦となっていた。
杏「言っておくが全く重くはないぞ。」
「う。」
思っていた事を見透かされると 桜は罰が悪そうな顔をしながら腹を圧迫しないように腕を体から離して自身を抱えている杏寿郎を見上げる。
「この抱き方は普通とっても疲れます。」
杏「俺の体は普通とは少し異なる。」
「分かってはいるのですが…感覚は分からないのでどうしても『疲れそう』って無意識に思っちゃうんです。」
杏「むぅ。慶寿郎、桜を説得してくれないか。」
「わうっ」
桜は本当に腹を蹴られると目を大きくさせて腹を見た。
それを見て杏寿郎も目を丸くさせる。
杏「蹴ったのか。相変わらず凄いタイミングだな。」
「本当に分かっていそうです…。」
2人は驚いた顔で目を合わせると互いにその表情を見ておかしそうに笑い合った。
そして桜はもう申し訳無さそうな顔をしなくなったのだった。