第93章 念願の
杏「書道教室の臨時講師としてだけではなく いつでも来て頂いて構わないのだぞ。」
「そう言うと毎日来ちゃいそうなのでこのくらいで良いんです。」
桜がそう言うと杏寿郎は少しだけ困った顔をしたが すぐに切り替えて頷き、運転席を出て助手席に回る。
これは付き合う前からずっと欠かさずやってきた事だ。
それがやっと尤もな状況で行われている。
「ありがとうございます。」
杏「当然だろう。」
桜は助手席から降りるとドアを閉めた杏寿郎に抱えられ、首に腕を回した。
これだけ毎回繰り返していれば ガレージから玄関まで歩いているところを近所の人に見られもする。
今や杏寿郎達夫婦の仲が特別良いという噂はご近所で有名なものとなっていた。
杏「只今帰りました!!!」
「ただいま帰りました!」
2人の声にすぐ瑠火と槇寿郎が飛んでくる。
瑠「桜さん、よくやりました!!」
槇「桜、偉いぞ!よくやった!!…孫娘か……。」
『よくやった』感覚のない桜は再び困った様に微笑みながら礼を言った。
そこに加わる千寿郎の姿はない。
杏寿郎が家に1日居られる日、千寿郎は出掛ける事が多いのだ。
それは普段誘いを断っている友人と会う為であったが、すぐに千寿郎も祝いのメッセージを返してくれた。
そうして家族皆に祝われたり労われたりして桜は少しこそばゆくなりながらも小さく拳を握って『元気な子達を産みます!!』と宣言した。