第93章 念願の
(男の子なら格好いいけど…女の子だと凛々しすぎないかしら……。)
杏「桜…?大丈夫か……。」
気が付くと手洗いうがいを終えた杏寿郎が冷や汗をかいて隣に膝をついていた。
「あ……杏寿郎さん。今子どもの事を考えていて…、」
深刻そうな顔が子供の事と繋がっていたと知ると杏寿郎は目を大きくして眉尻を下げる。
そんな過剰な反応に桜は少し困った様に微笑みながら大きな手に自身の手を重ねた。
その大きな手は心配の為か珍しく冷えている。
「大した事ではありません。杏寿郎さんの眉毛が女の子に遺伝したらどうしようかなと考えていただけです。」
それを逆隣で聞いていた同じ眉を持つ千寿郎はパソコンの画面を見ながらくすくすと笑った。
杏寿郎も詰めていた息を吐くと眉尻を下げて笑う。
杏「それは思春期に嫌われてしまいそうだな。」
千「僕もまとめて嫌われてしまいそうで怖いです。」
「だとすると、じぃじも嫌われてしまいますね。」
槇「その名で呼ぶな。」
「あ…、」
杏「只今帰りました!!!」
夕飯時が近付いて居間へやって来た槇寿郎は『聞こえていた。桜の前ではもう少し声量を落とせ。』と杏寿郎を注意し、どかっと上座に座った。