第93章 念願の
「食べている時は本当に美味しすぎて意識がどこかへ行ってしまう程に幸せなんです!」
千「姉上は確かに気を遣いましたが表情は作っていません!作れません!」
瑠火はじっと2人の真っ直ぐな瞳を見つめた後ふわりと微笑んだ。
瑠「そうでしたか。」
短くそう言うと瑠火はさっぱりと話を終わらせる。
そして居間に座布団を2枚重ねて敷き、桜を丁重に座らせてから夕飯の支度に戻った。
その桜の隣ではいつも通り千寿郎がきちんと正座をしながら 自身のノートパソコンを開いて学校の課題であるレポートを作成している。
すっかり背の高くなった真面目な大学生の千寿郎は飲み歩く事もなく 杏寿郎よりもずっと早く、週に1度は昼に帰ってくる。
そしてこの時間、桜は同じ学科に進んだ千寿郎のレポートを毎日手伝って過ごしていた。
(千寿郎くん、きっと友達からのお誘いを断って真っ先に帰ってきてくれてるんだろうな…。)
『そこまでしなくても良い』と言っても止めないであろう事は分かっていた為 それを言葉にして確かめる事はせず、桜はただ微笑みながら千寿郎の横顔を見つめる。
(こんな優しい子に育ってくれるといいな…。)
そんな事を考えていた時玄関のドアが開く音がした。