第93章 念願の
「……うん。『そういう症状なんだから言っても仕方ない、食事を作って下さるお義母さまに申し訳ない』って思って黙ってしまっていたけれど、赤ちゃんの為に少しでも吐かないようにしなきゃね。でも…杏寿郎さんには……、」
桜は千寿郎の前半部分の意見はすんなりと聞き入れたが 杏寿郎の事となると眉を寄せる。
千「兄上には言わないおつもりですか…?」
「その…今より過保護になったら私…、何もさせてもらえなくなるんじゃないかな……?」
そう言われると千寿郎は『確かに…。』と深刻そうな顔をした。
杏寿郎は三つ子と聞いて初めは喜んだものの、多胎妊娠のリスクを知っていくうちに桜にただついて回るだけでなく 桜が立って歩こうとする度に横抱きにして運び、1人で歩かせないようになっていた。
それもトイレへ行く時までになると桜も途方に暮れる他無くなる。
「つわりも早ければ来月中に無くなるかもしれないし、酷くなるようなら言うけれど今伝えるのはお義母さままでにした方がいいかな…。」
千「そうですね。」
そう言うと互いに胸に秘めた物を持っていた2人は ほっとした様に微笑み合った。
そして瑠火は遠慮していた桜を『水臭いですよ』と言いながらも抱き締め、口にし易そうな物を作ると約束した。
瑠「桜さんは全く症状が無いのかと思ってしまいました。大事な娘に気を遣わせていたなんて情けない。あれ程幸せそうな顔で無理を…、」
瑠火がそう申し訳無さそうな声を出した為 桜と千寿郎は目を丸くして首を横に振る。