第93章 念願の
そうして1週間後の日曜から杏寿郎と桜は煉獄家へと移った。
幸いな事に桜のつわりや苛々とした特有の初期症状は軽いようで食欲もあり、いつも幸せそうに にこにことしていた。
それが2週間程続き 5月に入る頃、千寿郎がとうとう桜に思っていた事を口にする。
千「姉上…。誰にも言いませんので正直に教えてください。……無理をしていらっしゃいますよね…?」
居間でぼんやりとしていた桜は隣の千寿郎を振り返って驚いた顔をした後、少し困ったように笑った。
「どうして?いま本当に幸せなの。無理して笑ってないよ。私の演技はすぐ分かられてしまうけど杏寿郎さんも誰も何も言わないでしょう?」
千「…その……笑顔は、本物なのでしょうが……、」
千寿郎は桜がもりもりと食べた物を杏寿郎が仕事に行った後にこっそりと吐いてしまっている現場を偶然に目撃したことがあった。
それから気になって注意してその後も観察したところ、それが毎食ではないもののほぼ毎日であると知ったのだ。
千「…食事を変えましょう。兄上にもきちんと伝えた方が良いです。」
「あ……そっか…ご飯の話か……。千寿郎くん私が戻してるところを見ちゃったんだね。」
そう言うと桜は納得したように頷いた。