第93章 念願の
千「姉上、おめでとうございます。」
「千寿郎くん!ありがとう。千寿郎くんを若い叔父さんに出来るようにがんばるね!」
笑いながら少しふざけてそう伝えると千寿郎はただただ嬉しそうな顔をして笑い返した。
杏寿郎は和室に座りながら隣に居るそんな桜の手をずっと大事そうに掴んでいる。
杏寿郎は最近いつもこの調子であった。
料理をしている時も、いつもは追い出されれば引き下がったにも関わらず ずっとくっついて回り、『体は辛くないか、料理は他に頼んだ方が良いのではないか、料理以外の家事は俺がするのでとにかく立たないでくれ』と言い、隙あらば手を繋ぎ、どこへ行くにもついてきて、妊娠したばかりで腹の薄い桜にただでさえ過保護な杏寿郎は心配する事を四六時中止めなかったのだ。
それでも気持ちがありがたく、心強く、桜は優しく手を握り返す。
すると杏寿郎はいつもパッと明るい笑顔を浮かべた。
(こんなに大事にしてくれる旦那さんは他にいるのかな…。幸せだな。恵まれているな…。)
そうして慣れている煉獄家での暮らしが再び始まり、桜は "旦那の実家" という場所でもストレスを感じること無くただただ大事にされ、幸せだけを感じながら過ごした。
――――――
「み……三つ子、ですか…………。」
先「ええ。初産で不安もあると思いますが、」
「やったあ!杏寿郎さん、1度に半分の子と会えますよ!!」
杏「ああ!あともう3人だな!!」
クリニックの先生は目の前の夫婦の目標が6人である事と、不安を感じさせない妊婦に戸惑いを隠せなかった。