第93章 念願の
(来たのかな。これがあなたのお父さんだよ。格好いいでしょう。お母さんも頑張るからね。)
杏「そう言う君も母親の顔をしているぞ。」
「え…本当ですか?…お母さんか……。でも、」
杏「分かっている。俺は君の事をずっと名で呼び続ける。俺も俺の立場を他に譲るつもりは無いので安心してくれ。」
「……はい。」
桜は杏寿郎の言葉を嬉しく思いながら改めて腹にある手の熱さを愛おしく思った。
そして次の月、杏寿郎の予言通り桜の月経は止まった。
―――
槇「もうか!!計算から桜が退職してすぐじゃないか!いや、2人ともよくやった!!」
瑠「ええ、喜ばしいことです。これから桜さんにお出しする料理はよくよく考えなくてはなりませんね。」
「ふふ、ありがとうございます。」
杏「ありがとうございます!!それで桜1人では心配なので出産まではこちらで過ご、」
瑠「勿論歓迎いたします。」
槇「ああ、俺も賛成だ。昔と同じ部屋を用意しよう。2人で居る時は離れを使っても良い。杏寿郎、お前もこちらに移るのだろう?」
杏「はい、桜と離れるつもりは無いので!!」
瑠「では杏寿郎が居る間は離れで、昼間は母屋で私達と過ごしましょう。桜さんのご実家からも車で30分と掛からない距離ですしご両親も安心でしょう。」
「そうですね。母も賛成していました。父は孫と聞いて固まっていましたが意識が戻れば賛成すると思います。」
そんな話をしているとリビングから和室をチラッと覗いていた千寿郎がおずおずと足を踏み入れ微笑みかける。