第93章 念願の
そうして杏寿郎以外の殆どのメンバーと話せた後、その会はお開きとなった。
杏「近くに居たというのに随分と君が遠く感じた。目も合わず、まるで一方的に想いを寄せているのではないかと思ったぞ。」
酒を飲まずにいた杏寿郎は運転席に入って来るなりそう拗ねた声色を出す。
すると桜は嬉しそうに笑った。
「ふふ、視線が怖い程鋭かったので敢えて見なかったんですよ。そんな風に想ってくれていたんですね。」
杏「む、鋭くなってしまっていたのか。それはすまない。」
自覚が無かった杏寿郎はそう謝ると優しく労うように桜の頭を撫でる。
杏「この様なストレスは今後掛けないように気を付けなければならないな。」
「まだ居ませんよ。」
桜がそう言って腹をさすりながら笑うと杏寿郎は目を細めて柔らかく微笑んだ。
杏「何を言っているんだ。帰ったら早速今夜から子作りをするのだぞ。今日出来る可能性もある。母親となる覚悟を今のうちからしておいてくれ。」
「こん、や……。」
目の前の男がどれだけ行動が早く せっかちであるかを失念していた桜は顔を赤らめて呆気に取られながらも何とか一生懸命に頷く。