第93章 念願の
杏寿郎も杏寿郎で大人の魅力を増していたが、桜も27歳という花咲く魅力的な年齢だ。
杏(いつもと違って髪を上げているせいか更に目立ってしまっていたな。卒業生の男親の反応を見るにあと1年で家庭に入ってもらうのは正解だったのだろう。)
杏「もうその髪を下ろしても良いのではないか。」
「……え?何故ですか?時透くんと話したら他の卒業生の元へ戻る予定です。まだ帰らないですよ。」
杏「…………そうか。」
杏寿郎は腕組みをしながら僅かに微笑みを浮かべていたが ほんの僅かに滲み出た嫉妬を感じ取ると無一郎はフイッと2人から背を向けて歩きだしてしまう。
「あれ?と、時透くん…?」
無「煉獄さんは昔から変わらないね。桜の事となると、」
杏「煉獄先生だぞ!!!」
無一郎が何を言わんとしているのかを察知すると杏寿郎は大きな声で続きをかき消した。
そして無一郎は特に食い下がらず、返事もせずにその場を後にしてしまった。
「あ……最後だったのに。」
桜は少し恨めしそうに杏寿郎を見上げる。
すると杏寿郎は少し居心地悪そうな顔をしてから腕を組み直した。
杏「すまない。だが時透は都内の大学に進む。また会えるだろう。」
「そういう事じゃないんですよ、もう。」
2人はそんな話をしながら再び卒業生が集まっているグラウンドへ向かう。
その2人の左薬指にはきちんと揃いの年季の入った指輪が嵌っている。