第3章 新しい世界
「あ…っ」
桜は逆に怖がらせてしまっていた事に気が付いて思わず声を掛けてしまった。
「ごめんなさい!だいじょ…っ!…ぁ…!!」
そこまで言って慌てて口を閉じた。
(ただでさえ異常に大きな猫の姿なのに、人の言葉で話したら怖がらせるに決まってる…!)
案の定目の前の少年は更に目を大きくした。
自分のうっかり具合に嫌気が差し、桜は耳を伏せる。
どうにかしてこの少年を安心させたいのに、良い案が浮かばない。
他の場所へ逃げてしまうという選択肢もあったが、このお屋敷の門の外から見える景色がその気を失せさせた。
(まるで映画のセットみたい……)
コンクリートで舗装されていない土の道、木製の電信柱。
目の前の屋敷だけではなく他の家も古風なものである。
それに…田舎ではなさそうなのにマンションやビルが一つも見えない。
見慣れない風景に疎外感を感じる。
そんな強い不安を感じながら外に出ることに比べたら、目の前の少年はさほど怖くない…そう思えたのだ。