第92章 祝福の日
桜がそう言って笑うと溜まっていた涙がつーっと流れる。
杏寿郎はそれを拭ってやると両頬を大きな手で包んで愛おしそうに見つめた。
杏「幸せだな。」
「…………はい。」
そう答えると再び流れ出してしまった涙を杏寿郎は少し驚いた声を上げながら拭い続けた。
そして披露宴も無事に終わり、2人は新しい家族である互いの義父母と兄弟に改めて挨拶をした。
瑠「籍は入れてますし正直なところ今更という気持ちはありますが節目は大事ですからね。改めて宜しくお願いします、桜さん。」
槇「娘になるのは2度目となるが1度目と同様、喜ばしい。何度でも嫁に来い。」
千「僕も大歓迎です。姉上以外に考えられません。」
「ありがとうございます。……、槇寿郎さんが素直……、」
槇「なっ」
桜が純粋に喜んで泣きだしてしまった為 槇寿郎は文句を言えず僅かに頬を染めた。
杏「改めて認めて下さってありがとうございます。必ず幸せにします。」
由「既に随分と幸せそうだったわ。これからも桜をよろしくね。」
杏寿郎は由梨の言葉にしっかりと返事をすると今度は勇之に向き合う。
だが泣き過ぎていて会話が出来そうになかった。
杏「これからもどうぞ宜しくお願いします。」
杏寿郎は一応もう一度きちんとそう伝えると勇之に頭を下げる。
すると勇之は杏寿郎の両手をしっかりと掴んだ。
由「『こちらこそ宜しく頼む。』、だそうよ。」
その言葉に杏寿郎はパッと顔色を明るくさせた。