第92章 祝福の日
その後も2人の思い出のムービーに煉獄家の玄関で杏寿郎にくすぐられて笑い泣きしながら廊下にころころと転がっている桜や、アミューズメント施設で悲惨なドライビングをしながら酷く真っ赤になっている桜の動画などが流出し、桜は動画同様真っ赤になった。
「き、聞いてません!撮ってた事も知らなかったです…!」
杏「サプライズだ!!」
悪意を感じさせない杏寿郎の明るい声色に桜は顔を両手で覆って俯いてしまう。
杏寿郎はこうなる事は分かっていた為 微塵も反省をしていなかった。
そしてただただ覗く赤い耳を見つけると目を細めて微笑んだ。
瑠「桜さんが俯いてしまわれたのですが動画を杏寿郎に渡したのは間違いだったのでしょうか。」
槇「いや……多分嫌がっている訳ではないんじゃ…ないか……?」
千(間違いだったと思う…。)
高校生になった千寿郎の見つめる先では兄が桜の赤い泣き顔を見て満足気に笑っている。
千寿郎は杏寿郎が以前 桜の泣き顔を愛でていた事を覚えていた。
千(兄上はまだあの性癖をお持ちなのか。だからといってここでしなくても…。)
そう思いながら見つめる視線の先で杏寿郎は桜には穏やかな笑顔だけを見せて宥めていた為 溜息をつく。