第91章 流れる月日
「わあ…。いつもと違う光景だ…。」
お焚き上げの爆ぜる音やそれによって照らされる人々の顔、建物、全てが非日常感を桜に与えさせ、わくわくさせる。
そんな顔を杏寿郎は愛でながら桜の頭に手を伸ばした。
杏「すれ違った2年間、何か行事がある度に『また君と過ごせなかった』と悔しく思っていた。だが今年は一緒に年越し出来るな。」
「すみません…。」
少し棘も孕んだ声に桜は小さな声で謝った。
すると杏寿郎は目を細める。
杏「責めてなどいない。だがもし君が罪悪感を抱くのなら これからずっと俺と共に過ごせば良いだけの話だろう。」
「は、い。」
杏寿郎の後ろでその会話を盗み聞いていた瑠火は杏寿郎の固執する態度に少し目を大きくさせた。
そうして甘酒を貰ったり、焼団子を食べたりしている間にどんどん日付けが変わる時が近付いてくる。
槇「杏寿郎!物を口に含んだまま年越しをする気か!」
「槇…、お義父さま、もう食べ終わりそうです!」
杏「ご馳走様でした!美味かった!!」
年越し蕎麦をたらふく食べたと言うのに杏寿郎は焼団子を40本食べてしまった。
そして千寿郎がスマホを見ながら年越しのカウントダウンを始める。