第91章 流れる月日
そしていよいよ大晦日―――、
一ノ瀬家は杏寿郎と桜が急遽籍を入れた為に夕飯から煉獄家の皆を家へ招き、2人は両家に改めて挨拶をする事になっていた。
「ん……、」
そんな日の朝、桜は目を覚ますと新着メッセージを報せるスマホのランプが点灯している事に気が付き手を伸ばす。
(……わ、千寿郎くんだ。気付かなかった。かわいいなあ…。)
桜は仕事が無くても杏寿郎が早く起きる事を知っていた為すぐに返事を打った。
杏「む。」
普段と違ってマナーモードを解除しているスマホが鳴ると、集中力が高い筈の杏寿郎の素振りが止まる。
杏(『今見ました、おはようございます。』……昨夜は寝てしまっていたのか。)
実際には起きていたにも関わらずチェックしなかったのだが、杏寿郎はそう解釈すると肩の力を抜いた。
そうしてモヤモヤは解消され、日が沈んで間もなく機嫌の良い杏寿郎は他の家族より一足先に一ノ瀬家へ足を運んだ。
杏「今夜は家族一同招いて頂いてありがとうございます。」
杏寿郎は改めてそう挨拶をすると深々と頭を下げ、それを一ノ瀬家の面々が慌てて上げさせる。
その後リビングで少し過ごした後 由梨の勧めで2人は桜の部屋へ引っ込んだ。
杏「気を遣われてしまったな。」
「私は嬉しいですよ。」
少しだけ久しぶりな2人は何をする訳でもなくただ寄り添って手を繋ぎ、ベッドに寄り掛かりながら座って昨晩の話などを共有した。