第91章 流れる月日
杏(『一晩経ったが何故連絡してこない。』……これは女々しいだろうか。『今は何を…、)
杏寿郎にしては珍しく打つ文に迷っていると夕飯を報せる瑠火の声が遮る。
杏「今行きます!!」
結局、杏寿郎はメッセージを送れないままポケットにスマホを仕舞い リビングへと向かった。
杏寿郎の懸念通り、桜は妙なところで杏寿郎が居なくても平気なところがあった。
正確に言うと満足するハードルが低い。
昨晩も実家という杏寿郎を感じさせない場で匂いを得られると それだけで十分に満たされてしまい、連絡するという発想が思い浮かばなかったのだ。
そして30日の今は明日の年越しが楽しみでうきうきとしている。
「年越しして初詣したらそのまま初日の出を見たいな。裏山からなら良い眺めが見れると思うの。」
勇「桜は昔同じ事を言って初日の出を見る為頂上に留まったが後悔していたぞ。人が多すぎてもみくちゃにされたからね。」
「そっか…皆考える事は一緒なのね。」
由「あら、それなら杏寿郎さんに抱っこしてもらえば良いじゃない。」
勇「それは駄目だ!破廉恥だろう!!」
由「あなた……。」
由梨が勇之を説教する中、桜は『なるほど。』と思い スマホを手に取った。
杏「……!」
夕飯を食べ終え、 メッセージを打とうとした時に桜の方から連絡が来ると杏寿郎はパッと笑みを作る。
そしてすぐに開いて内容を確認した。