第91章 流れる月日
(あ、危なかった……。)
桜はそう思いながら紙袋をベッドの下に隠そうとしてピタッと動きを止める。
そしておずおずと中に手を伸ばすと肌着を手に取り、ぽふっと顔を埋めた。
すると、やはり濃い杏寿郎の良い匂いがする。
(心強い……。)
桜は自身の行動に顔を赤らめつつ今度はきちんとベッド下に隠した。
―――
杏(桜はやはりドライなのか。)
30日、杏寿郎は一向に桜からの連絡を報せそうにないスマホを睨んでいた。
杏(昨晩からだぞ。あれ程寂しがっていたというのに。一旦離れてしまえば平気になってしまうのだろうか。)
余裕を持っていたかった杏寿郎は桜から連絡が来るのを待っていたが、さすがに日が傾き始めるとスマホを手に取った。
桜からの連絡を待っている最中、何度か違う相手からメッセージが飛んできた。
その中に天元もいた。
杏寿郎の予想通りあの穴開き下着は天元が用意した物であり、杏寿郎は桜に酷く引かれた事を伝えた。
すると天元は悪びれる様子無く、ただ『受け取ってもらったんだろ。よかったじゃねーか。』とだけ返した。