第91章 流れる月日
杏「本当に心当たりがない!!確かに俺好みではあるが下着屋に入った覚えすらない!!!」
「……え?」
(杏寿郎さん、これがただの下着屋で売っているものだと思ってるの……?)
杏寿郎はシロであると判断すると桜は肩を掴んで真っ直ぐに視線を寄越している杏寿郎に下着をきちんと見せてみる。
すると杏寿郎はぎょっとしたような顔をした。
杏「……なるほど。」
杏(恐らく宇髄だろう。それで俺の好みを気にしていたのか。たしかに愛らしいが…、)
「なるほどって……何が分かったのですか…?」
杏寿郎はそう問いながら眉尻を下げて困ったようにしている桜の肩から手を離すと 優しくゆっくり頭を撫でる。
杏「宇髄と買い物に行ったんだ。その時に恐らく入れられたのだろう。だが愛らしいのも事実だ。俺は君に着てもらいたいのだが…、」
そこまで言って杏寿郎は口を噤んだ。
桜がまた眉を寄せたからだ。
「杏寿郎さん。これは……なんだか俗っぽいです。尊い愛し方に必要だとは思えないです。」
杏「確かに俗にまみれた欲の匂いがするし 無くても出来るが、とても似合うだろうし 着てくれたらとても……嬉しい。」
杏寿郎は『とても、興奮する』と言いそうになって慌てて繕ったが桜は眉を寄せたまま首を傾げる。
「尊いものだと思えなくなったら昔に逆戻りして恥ずべき行為だと思ってしまいそうです。それでも着てほしいのですか…?」
杏「是非頼みたい!!!」
杏寿郎の眩い笑顔に桜は少したじろぐと下着を包みに入れ直し、紙袋に戻した。