第91章 流れる月日
杏「これは君だけが身に着ける物だ。」
杏寿郎はどこか自信を取り戻したような笑顔でそう言った。
桜はそれにきらきらとした笑顔を返すと中身を取り出す。
その時、桜が掴んでいた大きめな包みにつられて一回り小さい包みが桜の太腿の上に落ちた。
杏「………………。」
杏寿郎は身に覚えのないその包みを見て眉を寄せる。
桜はその視線に気付かず、そちらの包みに気を取られて手を伸ばした。
杏「桜、」
―――パサッ
杏寿郎は怪しんで開けるのを制止しようとしたが、桜が包みを持ち上げただけで中身がするりと落ちた。
杏寿郎がこれ等のプレゼントを選んでいた際、付き合ってくれた人物がいた。
それは杏寿郎の友人、宇髄 天元だ。
そして籍を入れる予定である事を知った天元はささやかな祝いの品を忍ばせていた。
「杏寿郎さん…、」
杏「俺ではないぞ!!!」
杏寿郎が慌てて下着と思われるそれを桜の手から取り上げようとすると桜はパッと身を後ろに引く。
そしてジッとその白いレースの下着を見つめ、ブラジャーにもショーツにも大事な場所に切れ目があり 着衣したまま行為が出来るようになっている事を確認すると再び杏寿郎に視線を戻した。
その表情は若干引き気味である。
そんな顔で見つめられると杏寿郎は心外そうな顔をして桜の両肩を掴んだ。