第91章 流れる月日
「…考えておきます。こちらは……、わあっ」
冴えなかった桜の表情は大きい方の包みに入っていたエプロンを見るとパッと切り替わる。
その嬉しそうな表情に杏寿郎は目を細めた。
「エプロンだ!ふふ、このデザイン、なんだか新妻さんらしいです。」
杏「うむ!俺もそう思って選んだ!!是非使ってくれ!!」
「毎日使います。お料理するのが楽しくなりそう。」
そう言うと桜はエプロンをきゅっと胸の中に閉じ込めて杏寿郎にはにかんだ笑みを向ける。
「杏寿郎さん、素敵なプレゼントをありがとうございます。とっても大事にしますね。」
杏「……ああ。」
杏寿郎は桜の喜び様を見て自身の考えが杞憂であった事を改めて実感し 同時に愛おしい気持ちが溢れると桜をひょいと持ち上げて向き合う形で自身の太腿の上に跨らせた。
「きょ、きょじゅろさ…、」
杏「これから会えなくなる。約束の服を渡そう。」
そう言うと杏寿郎は目の前で服を脱ぎ、肌着を紙袋の1つに入れてから着直す。
そして赤くなっている桜にねだるように軽いキスをした。
「あ、あの、」
杏「君も用意していないのだろう。それなら俺と同じようにすれば良い。」
「…………目、瞑っててください。」
桜はそう言って杏寿郎が目をしっかりと瞑った事を暫く確認した後、漸く服を脱ぎ始めた。
そして杏寿郎が欲するキャミソールを脱いだ時、合うはずの無い視線がかち合う。