第91章 流れる月日

杏「では俺はこれで失礼致します。また明後日の年越しの際にお会いしましょう。」



勇「ああ！では、」

由「はーい、今日はお祝いに来てくれてありがとうね。桜、お見送りして差し上げて。車まできちんとね。」


「……？…はい。」




桜は勇之に何かを耳打ちして凍らせた由梨を振り返り首を傾げたが、杏寿郎と2人きりになれる事を嬉しく思うと両親に頭を下げる杏寿郎の側へ寄った。




杏「……お母様にはよくよく礼を言わなければな。桜、車に君への贈り物がある。受け取ってくれ。」


「え！わあ！」




桜がぱああっと顔色を明るくさせると杏寿郎は鍵を解除し、落ち着かせるように桜の手を握る。




杏「それがだな、相応しくない物を用意してしまったんだ。なので先程すぐに渡せなかった。」

「杏寿郎さんが選んで下さったのならそれがベストです！」




桜は助手席に座らせてもらいながらそう言うと杏寿郎の腕をぎゅっと掴んだ。


杏寿郎は一瞬きょとんとした顔をした後 軽くキスを落とし、ドアを閉める。


腕を掴んでキスをねだった訳ではなかった桜は顔を赤くしながら運転席に入ってきた杏寿郎を少し恨めしそうに見つめた。


それを見ると杏寿郎は優しく微笑んで身を乗り出し、桜が少し動揺したように体を揺らしたのを笑いながら桜の真後ろの後部座席に腕を伸ばす。




杏「驚かせてすまない。」




杏寿郎は複数の紙袋を手に取って運転席に座り直すとそれ等を差し出した。