第91章 流れる月日
由「はーい、歌ってくださいね。せーの、」
由梨の合図に応えて勇之と杏寿郎が口を開いた。
桜は杏寿郎が座る隣からスゥゥッと大きく息を吸う音が聞こえると共に鳥肌が立った為 咄嗟に耳を塞ぐ。
桜の予想通り、杏寿郎の歌声はとてもとても大きかった。
桜はなんとか笑みを浮かべていたが、まともに大音量の歌を聴いた由梨と勇之は歌が終わっても目を丸くさせており 桜がろうそくの火を消すさまを呆然と見ながら拍手をした。
それから2人の聴力が回復するのを待ちながらケーキを食べ、食べ終わると自然とプレゼントを渡す時間となる。
由「私からは服よ。桜が『杏寿郎さんの隣にいる時はオシャレ出来るようになった』ってはしゃいでいたからねえ。」
「わあ!ありがとう!」
包みを開けると可愛らしく目を引くような服がたくさん入っていた。
桜は由梨に抱き着くともう一度礼を言った。
勇「私はそういったセンスは持ち合わせていないからな…。」
桜の喜びようを見て勇之は少し自信無さ気に自身のプレゼントを手渡す。
包みを開けるとそこには電磁実験が出来るキットが入っていた。
由「あなた……これは男の子にあげるものですよ…。」
「わあ…っ!自分で好きに一から回路を組めるんだ。楽しそう…お父さん、ありがとう!」
勇「ああ、よかった!やっぱり私の娘だなあ。」
由「もう……。」
そんな会話を聞きながら杏寿郎はジャケットのポケットにある車の鍵を握り締める。