第91章 流れる月日
杏「と言う事なので俺達は裏山に行って参ります!!」
「行ってくるね。」
2人は祝いの夕飯の支度に取り掛かっている由梨と特に何もしていない勇之に断りを入れると家を出た。
「お父さん、ユキには弱いようですね。」
杏「うむ。あっさりと送り出されたな。」
桜は階段を登る途中でユキを呼ばず、山を登り切ってからユキを呼んだ。
するとすぐにユキが姿を表して首を傾げる。
ユ『桜…階段で私の名を呼ばないのはト…おばあさんと初めてここへ来た時以来じゃないのか。何かあったのか。』
「ふふ。じゃーん。杏寿郎さんとまた夫婦になったから報告に来たんだよ。」
桜はそう言いながらユキに指輪を見せる。
ユキは指輪に関しては首を傾げたが すぐに嬉しそうにふわっと尻尾を揺らした。
ユ『随分と時間が掛かったから他の相手が出来てしまったのかと思ったよ。杏寿郎が報われて良かった。』
「もう、他の人なんて選ぶはずないでしょ。前にも杏寿郎さんが言ったけど正式に夫婦になるには色々と大変なの。」
杏「ユキは何と言っているんだ?」
桜の言葉で大体の会話を既に察している杏寿郎は穏やかではない声色を出した。
「じゅ、純粋に時間が掛かったから不思議に思ったみたいです。私は他の人と紛らわしいことになんてなっていませんよ。ユキの見当違い過ぎる憶測です。」
その少し困った様な怖がる様な声色を聞くと 杏寿郎ははたと我に返る。