第90章 行動が早い男
「お父さん大丈夫かな……。」
由「いいから後はお母さんに任せて行ってきなさい!どうせ桜が27になったとしてもゴネるんだから今は滅多にないチャンスなのよ!」
「そ、そっか…。」
杏「ありがとうございます。桜、行こう。」
杏寿郎にパシッと手を取られると桜はしっかりと頷き、2人は思ったよりも早く区役所へと向かったのだった。
時間外窓口の職員は必要な書類を確認すると祝いの言葉を述べた。
そして桜が思ったよりも呆気無く婚姻届は受理され、2人は法的に晴れて夫婦となったのだった。
「煉獄 桜……。」
杏「漸くだ!!!」
杏寿郎は興奮気味にそう言って ぼーっとしている桜を車へ導き、自身も乗り込むと早々にキスをする。
杏「また夫婦になれたぞ!!君はもう俺の妻だ!!!」
「呆気なくて実感が湧かないような……今更のような……。」
杏「確かに呆気無かったな!!生活に大きな変化は無いが確かに俺達は夫婦だ!」
杏寿郎はぎゅうっと桜を抱き締めると嬉しそうな声を出し、桜は微笑みを浮かべるとそれに応えるようにきつく抱き締め返した。
「 "また夫婦" …ですが、今回は鬼殺に意識を割く心配はありませんね。普通の、 "平和な世の夫婦" です。」
杏「ああ、そうだな。幸せだ。これをどれ程焦がれ欲したろうか。」
少し小さくなった声を聞くと桜は杏寿郎の大きな背中を暫くの間 優しく撫でたのだった。