第90章 行動が早い男
勇(桜の身を守れるのなら……、もともと杏寿郎君に許可をする事はもう決まってはいたんだ。残っていたのは年齢の問題だけであって…。だが早い方が桜の身の為になるのなら…迷う必要なんて……、)
勇「……………………杏寿郎君、」
落としていた視線を上げると杏寿郎はどこを見ているのか分からない笑みを浮かべていた。
婚約指輪について話そうかどうか迷っていたからだ。
勇之は少し首を傾げたがすぐに真剣な顔になって言葉を紡ぐ。
勇「……君が、守ってくれ。桜の一番近くで………………夫として…。」
その言葉に迷っていた事を忘れると 杏寿郎は大きな目を更に大きくさせて椅子から下り、頭を下げた。
杏「必ず守ります!!ではお義父様、証人欄にご記入頂いても宜しいでしょうか!!!」
勇「しょ、う…………?」
「お父さん早く書いて!勢いでいった方がいいと思う!」
勇之は目の前に婚姻届を差し出されると白目を剥きながらも流されるまま記入した。
杏「うむ!!全て埋まったな!!!では役所に出してきます!!」
由「え?え?」
やっとキッチンから出て来た由梨は杏寿郎の手元を覗き込むとさすがに目を丸くさせる。
由「今から?ああ、誕生日に籍を入れたかったのね。急いで気を付けて行ってらっしゃいな!」
驚きはしたものの安定の順応の早さを見せた由梨は杏寿郎と桜の背中を押してリビングを出た。