第90章 行動が早い男
一ノ瀬家に着いてインターホンを押すと桜が名乗る間も無く勇之が出て来た。
勇「よく来…、」
由「……勇之さん?2人共いらっしゃ…、あらあら!」
迎えに来た2人は早々に桜の薬指に輝く婚約指輪を見付け それぞれの反応をした。
杏「これ程早く分かられるとは思いませんでした!此処で報告する事をお許しください!5日前に桜さんに結婚の申し入れをさせて頂きました!!」
「もちろんお受けしました。」
勇之は固まってしまって声が届いていない様子であった為 2人は歓迎ムードの由梨に向かって微笑む。
すると由梨は杏寿郎の手を両手で握ってにっこりと微笑み返した。
由「何度も言うけれど私は大賛成よ。ささ、中へ入って。今日は何倍もおめでたいわねえ。勇之さんはいい加減にして下さいね。」
少し冷たい言葉に勇之はビクッと体を揺らして我に返り、しょんぼりとした顔をした後 俯きながら由梨の後に続いてリビングへ向かった。
杏(反対の言葉は出されなかったな。……いや、楽観視は良くないだろう。精一杯の誠意を持って俺に出来る限りの事をするんだ。)
勇之と杏寿郎がリビングテーブルに腰掛けると由梨と桜は手土産に合うお茶を用意しにキッチンへと向かう。
桜はキッチンへ入る直前に杏寿郎に向かって拳を握り、『頑張って!』と口だけを動かし エールを送った。
すると杏寿郎は凛々しい笑顔を浮かべながらそれに頷いた。