第90章 行動が早い男
「怒っている時間を長引かせたくないから切り替えたんです。もうからかわないでくださいね。」
杏「そうか。」
杏寿郎は少し残念そうに言うとマンションの駐車場に車を停める。
そしてすぐに運転席を出て助手席に回り、相変わらずもたついている桜の代わりにドアを開けた。
杏「おいで。」
桜がなんとか杏寿郎の手を煩わせないうちにシートベルトを外すと杏寿郎は桜の両脇に手を差し入れる。
そして桜は慣れたように杏寿郎の首に手を回すと杏寿郎に降ろしてもらった。
そんな風にべたべたに甘やかされている事にも桜は気が付いていない。
その様子を見て杏寿郎は再び溢れそうになる笑みを噛み殺した。
杏「精神的に少し疲れたろう。明日の誕生会に備えて休むと良い。」
その優しい声色に桜は呆気無くふわりと花の様な笑みを返す。
「では年末は別行動になってしまうので杏寿郎さんと一緒に休みたいです。」
杏「願ってもない頼みだな!勿論良いぞ!!」
杏寿郎はそう言うと桜の手を包み込むように優しく握り、家へ急いだ。
それから2人は仲良くソファでくっついて過ごしたり、一緒に料理をしたり 風呂に入ったりといつも通りではあるが、いつもよりはくっついて過ごした。