第90章 行動が早い男
「逆効果ってなんですか?」
杏「んーー。」
杏寿郎は微笑みながら運転を続け、その答える気のない様子に桜は眉を寄せる。
(からかわれている気がする。多分気にしたら思うつぼだ。気にしない、気にしない…!)
桜はそう思うと敢えて横の窓ではなく前を見つめた。
しかしチラッと桜を盗み見た杏寿郎はまた楽しそうな笑い声を上げる。
「もう!さっきから何なんですか!」
そう眉を顰めるも杏寿郎は悪びれる様子はなかった。
杏「すまない!だが君も悪いぞ!気持ちを切り替えようとしたのは偉かったが 口は尖っていたし頬も愛らしく膨らんでいた!!」
「………………!!」
桜は思わずバチンッと両手で自身の顔を勢い良く覆う。
そして暫くの間、杏寿郎が楽しそうに話し掛けても赤い耳を覗かせながら桜は両手を退かさず、一声も発しなかったのだった。
杏「む、もう良いのか。」
桜が家に着く前に両手を退かせると 気配ですぐに気が付いた杏寿郎が意外そうな声を上げる。
一方、赤みの消えた桜は少しだけ眉を寄せた。