第90章 行動が早い男
女「あら、彼氏さんの方はもう書き終わられたんですか?」
杏「いや、名前や連絡先などの欄のみ記入した!他は彼女の用紙を参考にして欲しい!!」
「急いで埋めるのでちょっと待ってくださいね。」
桜はどこか不自然な笑顔を浮かべるスタッフと『納得するようにきちんと回答してくれ!』と言う杏寿郎に見つめられながら急いで用紙を埋めた。
(ふぅ…………あれ……?)
スタッフは笑顔だったが、その表情の中には何となく残念がっているような妙な色が浮かんでいた。
その原因は杏寿郎が手洗いに行く為に席を立った時に判明した。
女「こちらへお越しにならない彼氏さんもいらっしゃるくらいですので、煉獄様は他の方と比べてもとっても良い彼氏さんなんですよ。式場見学にも2人で行く気だと仰られていましたし…。」
そう言われて桜は杏寿郎が用紙をほぼ白紙で提出したが為に "式場選びを億劫に思っている彼氏" だと思われていたのだと悟った。
すると桜は思わずふにゃっとした笑みを浮かべる。
「心配してくださってたんですね。大丈夫ですよ。あの人は嘘を1回も言っていません。とっても積極的です。私より積極的かも…。」
杏「何がだ。」
「杏寿郎さん…、お帰りなさい。」
桜は『何でもないです。』と言いながら隣をぽんぽんと叩いて座るように促した。
スタッフは食い下がる杏寿郎を見つめながら意識を切り替えると2人に向けて様々な式場を提案していった。