第90章 行動が早い男
槇「あの戸惑いよう、桜に説明し忘れているな。」
瑠「ええ。」
千「兄上は判断が早いですが、周りを置いてきぼりにする時が多々あります。」
それに同意を示すように両親は頷いた。
「あの、どちらへ?」
杏「言ったろう。戸籍謄本を貰いに行く。先に世田谷区、そして次に杉並区の区役所へ行くぞ。」
「は、い……。何故ですか?」
そう問われると杏寿郎はエンジンをかける手を止め、目を丸くさせながら助手席の桜を見つめた。
杏「婚姻届を出す為に決まっている。お父様の許可が下りればすぐ出しに行くぞ。君の誕生日に籍を入れたいんだ。」
「えっ!?その日にですか…!?でも、29日からは役所が閉まっているんじゃ…、」
杏「婚姻届は365日出せる!時間外窓口があるのでそこで出す!身分証と判子も忘れるな!!」
「………もしかして、さっき槇寿郎さんに書いてもらってた紙って…、」
杏「うむ!婚姻届だ!!証人欄に記入をして頂いていた!!もう1人の証人には君のお父様になって頂きたい!!」
「書くのにすっごく時間が掛かりそうです……。」
そう言いながら杏寿郎が取り出したファイルを受け取り中を確認する。
すると花婿の欄は記入済みであった。
「一緒に書きたかったですー…。それに何だかこの婚姻届可愛いですね。」
杏「結婚に関する雑誌を買ったら付いていたんだ!堪らずすぐに書いてしまった!すまない!!」
そう言ってエンジンをかけると少し興奮気味の杏寿郎は区役所を目指した。