第90章 行動が早い男
和室に入ると槇寿郎が既に座っている。
そしてやはりすぐに桜の薬指を見て『やっとか。随分と時間が掛かったな。』と呟いた。
杏「それ見ろ。今更と言ったろう。」
「……はい。本当ですね。」
それでも一応皆が席に着くと杏寿郎と桜は背筋をぴんと伸ばし、改めて婚約の報告をした。
杏「桜のご両親の許可が下りれば籍はすぐに入れるつもりです。」
「父は素直になっていませんが、もう杏寿郎さんに好意を持っていると思います。すぐ許可は下りるかと…。」
槇「そうか。それであのマンションにずっと住むのか。こちらに帰ってきても良いのではないのか。離れも住めるようになっているぞ。」
杏「あちらはもう買ってしまったので子供が少ないうちはそのまま住もうと思っています。」
「え"っ」
桜は『家賃はいくらなのですか、少しは払います。』と言う度に杏寿郎が『かかっていないので要らない!』と返された事を思い出す。
(躱されてたんじゃなくてそういう事だったんだ……。)
杏「ではそういう事ですのでまた話が進みましたら連絡を入れます!!今日はまだ寄るべき場所があるのでこれで失礼します!!」
「えっ、杏寿郎さ、」
杏寿郎から何をするのか聞いていた煉獄家の面々は引き留めず、寧ろ快く送り出した。