第90章 行動が早い男
杏「たったこの程度で腹一杯になる筈が無いだろう。40年以上渇きっぱなしでいたのだぞ。一生掛けても足りないくらいだ。」
「そ、うですね…。」
思わぬ返しに桜は俯き、少し戸惑ったような声を上げる。
杏寿郎はそれに気付いたが特に何も言わず、逆にそれを利用して 桜の腕に自身の腕を絡ませたり首元に顔を埋めたりとやりたいように行動した。
(やっぱり40年は大っきいなあ…。なるべく杏寿郎さんの望みは叶えてあげたい……。)
桜はそう思うと顔を見たくなり、杏寿郎の手を握って後ろに体重を預け 杏寿郎を見上げる。
すると杏寿郎は動きをぴたっと止め、ねだられたと思ったのかすぐにキスをした。
何度も繰り返し 漸く顔を話すと、今度は間髪入れずに口を開く。
杏「明後日、27日の月曜は俺の家へ行く。報告だ。」
「……はい。」
杏「明々後日の28日も出掛ける場所がある。空けておいてくれ。」
「はい。」
杏「そして弥明後日は君の誕生日だな。」
そう言うと杏寿郎は何とも言えない幸せそうな笑みを浮かべて桜を抱き締めた。
「………?……はい。その2日後の年越しはユキの神社でしませんか?毎年両親と必ずそこで過ごすんです。なので出来たら煉獄家のみなさんもご一緒に皆でいられたらな、と…。」
杏「それは良いな!3人とも喜ぶ!!」
杏寿郎はそう言うと早速スマホに手を伸ばしてタタタッと文字を打っていく。
するとピロン、ピロンとすぐに返事を報せる音が鳴った。