第90章 行動が早い男
「迷惑にならなくても恥ずかしいです…!いちゃついていると思われてしまうかも知れません!」
杏「実際は楽しませようとしているだけだ。気にする事は無い。」
朗らかな声でそうきっぱりと言いながら杏寿郎は迷いなく歩いていく。
桜は腹を括ると片手で顔を隠しつつ杏寿郎の首に腕を回してしがみついた。
それを褒める様に杏寿郎の手が桜の背を撫でる。
杏「しっかり目を閉じているんだぞ。」
「はい。」
ただただ運ばれながら目を閉じている桜はする事がなく、先程見たイルミネーションを思い出して それより凄いものがどの様なものなのか予想しようとして首を傾げていた。
(色んな色なのかな。でも私は普通の色のほうが好きかも。)
そんな事を考えていると歩みの速い杏寿郎はすぐに着いた事を報せる。
そして身長の低い桜の為に敢えて抱いたまま目を開けるように言った。
「……わ………………。」
桜が目を開けると 街路樹に灯った光が見えなくなる程先まで続いていた。
そして思わず言葉を失くしていると杏寿郎が楽しそうに笑う。
杏「300本を超えているらしいぞ!!君の好みだと思うのだがどうだろうか!」
「はい……とっても素敵です……。」
そう言って桜は杏寿郎の首に回していた腕にきゅっと力を込めた。
それから桜は降ろしてもらうと手をしっかりと握りながら浮ついた空気の通りをゆっくりと歩いた。