第90章 行動が早い男
「土曜なだけあって人が多いですね。」
杏「日が落ちてイルミネーションの時間になればもっと混むと思うぞ。」
「イルミネーション……。」
人混みを避けていた桜にとってそれはテレビで見るものであった。
その反応に杏寿郎はハッとする。
杏「見たいのか!流石に今からずっと此処で待てば体を壊すので…、」
「い、いえ…!今のはただ復唱しただけで…別にそんな、み、見たいわけでは……、」
杏「いや!!見せる!!!」
杏寿郎はキッパリと宣言するとスマホを弄り、過ごし方を考え始めた。
杏「うむ!近くにスパがあるので近くの商業施設をぶらぶらとした後 そこで岩盤浴でもしてゆっくりしよう!!」
「岩盤浴…!」
ここでも良い食い付きを見せた桜を杏寿郎はにこにこしながら撫でて優しく手を取る。
桜もその笑顔を見ると同じくにこにこと微笑んで手を握り返した。
「杏寿郎さん!建物内にも大っきなツリーがあります!!」
杏「本当だな!暗くなってからが楽しみだ!!」
2人はその建物に入ると上に登っていき、最上階のテラスに出る。
杏「あの大通りの木が夜になると光るらしいぞ!」
「え!絶対に素敵です!夜にまたここに登りましょう!!」
昼間からイルミネーションの話題を、それも基本的な事ばかりを話していれば当然目立つ。
それでも2人の楽しそうな雰囲気と2人だけの世界を見ると皆が皆毒気を抜かれてただ見守った。