第89章 ※漸く訪れた一夜
「………………素直に……?」
杏「ああ、そうだ。いつものように身も心も委ねて良い。安心して任せなさい。」
そう歳上ならではの口調を使われると桜はいとも簡単に安心した表情に戻る。
その操り易さに杏寿郎は少し心配になりながらも桜の両手を優しく握りながら覆いかぶさり優しいキスを始めた。
それは徐々に深くなり、舌が絡むと互いの頭を痺れさせる。
特別な日に加えて特別な場所。
非日常感が2人により大きな火をつけ、行為に没頭させていく。
「……ふ、…っ……、」
深いキスをしながらも杏寿郎の手が触れるか触れないかぎりぎりのタッチで桜の肌を撫でる。
その絶妙な触り方に桜が身震いをすると杏寿郎はグイッと桜の上体を起こさせて今度は耳や首筋に唇を這わせ始めた。
そして背中をゆっくりと撫でる。
すると桜の体の熱は途端に増し、眉は悩ましげに寄った。
情欲と共に桜も積極的になり、杏寿郎の肩を甘く噛んでいく。
杏寿郎は桜のスイッチが完全に入った事を悟ると笑みを漏らしながら再び押し倒した。
杏「うむ、すっかり切り替えられたな。偉いぞ。」
そう褒めるように撫でられている桜はとろんとした顔をしている。
杏寿郎はその様子に目を細めると手を下へ移動させていった。