第88章 関係の名称
それは大正時代からあるホテルであり、桜自身もよく知っているホテルであった。
利用したことがあったからだ。
「……ホテル。約束の、ホテルです。」
杏「うむ。今日は此処に泊まる。」
「なんだか……、怒涛です。」
桜はそう言うと杏寿郎に連れられて駅直結のそのホテルへと向かった。
(……今スイートルームって言いませんでしたか、杏寿郎さん。)
荷物を部屋へ運んでもらうように頼むと、杏寿郎はレストランを目指した。
杏「流石に腹が減った。すまない、食事にさせてくれ。」
「ふふ、私もお腹空いちゃいました。」
随分と変わった内装に何となく寂しさを覚えながらも桜は案内された席へ着いた。
食事は目立ちたがらない桜の希望通り、何も起きずに終わった。
杏寿郎はスタッフを驚かせるほど食べると満足気に微笑みながら桜の手を優しく握り、最上階へと向かった。
「今も変わらず4階建てなんですね。」
杏「うむ。」
予約されたスイートルームは最上階の4階でリビングとダイニング、ベッドルームに別れており、シャンデリアなどのクラシカルな英国風インテリアを備えた洗練された部屋であった。
杏「風呂には泡の出る湯船もテレビもある。一緒にゆっくり入ろう。」
「わあ!はい!楽しみです!!」
桜がそう快諾すると杏寿郎は桜を抱えて早速風呂へ向かった。