第88章 関係の名称
―――ピピピ、ピピピ…
杏「………………桜…?」
「……………………。」
いつもは桜が毎朝セットされているアラームをすぐに止めて杏寿郎を声で起こし、朝ご飯が出来た事を報せる。
杏寿郎はそのいつもは長引かないアラーム音が鳴り止まず、更に桜がまだ腕の中に居る事に驚くと顔を覗き込んで大きな目を見開いた。
杏「……熱か。体を冷やして体調を崩したな。」
杏寿郎は赤い顔で少し速い息をしている桜の頬を優しく撫でると急いでベッドから出て体温計と水、風邪薬、氷枕と出来る限りの物を用意して戻ってきた。
杏(第一何故あの様な場所で寝ていたんだ。熱はどのくらいだろうか。俺も病院へ付き添わなくては気が休まらない。)
固く絞ったタオルで桜の顔を拭っていると上手く挟めていない脇の内で体温計の音が鳴る。
杏「………………桜が死んでしまう。」
示されていた数字は38.4℃。
確かに高いが死ぬような体温ではない。
杏寿郎は急いで上司に連絡を入れると目覚めてぼーっとしている桜を着替えさせ始めた。
「…………あの…杏寿郎さ、」
杏「喋らなくて良い。38度も熱が出ている。今すぐ病院へ行くぞ。」
桜は大人しく黙ったが、杏寿郎の腹の音を聞く度に困った様に眉尻を下げた。