第88章 関係の名称
「構いませんが、教えてはくれないのですか?」
杏「それは無理だな!!」
食い気味に答えられると桜は少しだけ口を尖らせたが、小さく息をついて『わかりました。』とだけ答えた。
それを見ると杏寿郎は褒める様に頭を撫で、眉尻を下げながら微笑んだ。
杏(さすがにプロポーズについて君に話すのは野暮と言うものだろう。)
――――――
証拠が揃い、更にすんなりと自白もした細田の審理はそれから1ヶ月と少し経った頃に行われ、その2週間後の11月半ばに判決が言い渡された。
計画的であり残虐且つ反省の色が見られない細田の判決は誰もが想像した通りの結果となった。
寒くなった風の中、杏寿郎と桜は勇之と由梨と共にみのるの墓参りに行き、それを報告した。
勇「そういえば2人は年越しをどうするつもりだ。部活はどうなっているんだ?」
「学校自体が29日から1月の3日まで閉まっているからその間は部活もなしだよ。」
一ノ瀬家のリビングテーブルにて桜の隣に座る杏寿郎は同意を示すように頷いた。
勇「……そうか。それなら桜は29日から帰省すればいいんじゃないか?…杏寿郎君とは年が明けたあとにでも、」
由「あらあら、29日は桜の誕生日ですよね?なぜ邪魔をするんですか?」
ギクッと体を揺らした勇之はいつも以上に凛々しい表情をしている杏寿郎の顔を盗み見て眉尻を下げる。
勇(ただの誕生日ではない。あの顔は…、)
―――『プロポーズをしようとしている。』
という勇之の予想は外れていた。