第88章 関係の名称
杏「……すまない。君に悪気が無い事は何度も聞いて分かった気でいたのだが 面白くなく感じてしまった。大人気が無かったな。」
「いえ…、私の意識がおかしいのかも…。6つも年上の彼氏さん相手にわんちゃんみたいで可愛いなんて普通は…、」
そう言って悩む桜を見つめながら杏寿郎は別の事を考え始めた。
杏( "彼氏" か…。真犯人も捕まったのだ。桜にプロポーズをする良い頃合いだと言えるだろう。いや、判決が出るまでは待つべきか。だとすると保留となっていた10月の試合は正式に延期としてもらわねば順番が前後してしまう。)
「杏寿郎さん……?」
杏寿郎が気が付くと桜は杏寿郎の頬を両手で包んで少しむくれた顔をしていた。
杏「すまない。全く聞いていなかった。」
「もう!」
そう言うと桜は杏寿郎のもみあげをぎゅっと掴んだ。
しかし引っ張る訳でもなく、ただぎゅむぎゅむと握っている。
それを見て杏寿郎は首を傾げた。
杏「桜…?何をしている。」
「この触り心地を堪能して拗ねたい気持ちを昇華させているんです。…杏寿郎さんが考え込む時は私のことを考えてくれている時が多いので……。」
そう言われると杏寿郎は微笑んで桜の両手を包み込むように握った。
杏「愛らしい解決法だな。確かに君について考えていたが、だからと言って今の君を蔑ろにして良いと言う理由にはならない。すまなかった。」
そう言うと謝るように優しく額にキスを落として額を合わせる。
それは2人が互いに好きな仕草だ。