第88章 関係の名称
昨夜は気を遣う事が多すぎて十分に集中が出来なかった杏寿郎は思う存分音を気にせず、そして激しくも甘く、何度も褒めて撫でながら桜を抱いた。
「杏寿郎さん…、今日は部活をお休みにさせてしまってすみませんでした…。」
甘い事後、唐突に出て来た台詞に杏寿郎は目を丸くした。
杏「君は妙な事を言うな。気が触れた殺人犯に拉致された翌日だぞ。それに警察にも呼び出されていた。」
「………。」
桜は発言前、ふと何気無く明日、明後日の事を考えていたのだ。
明後日、つまり次の月曜日は祝日だ。
そして駒校の部活は基本的に祝日は休むように言われている。
つまり3連休のうちのたった1日の部活の日を潰してしまったのだ。
「そう、ですが……。」
杏(昔のような…同い年であった時のような気の遣い方だな。きちんと甘えなくなっている。)
杏「変に気を遣わなくて良い。今はただ手に入れられた穏やかな暮らしを味わってくれ。」
それを聞いて桜はほっとした顔になる。
だがすぐに首を傾げて眉を寄せた。
「…………………………はい。」
桜の返事が妙な声色であった事に気が付いた杏寿郎は腕の中の桜に視線を落とし、理由を尋ねるように指の背で頬を撫でた。
すると桜は気まずそうな表情を浮かべて顔を上げた。