第87章 穏やかな生活
(2つ隣の女の人、さっきから杏寿郎さんの事見てる…。)
「杏寿郎さん、隣に座ってください。…そこに立たれるの、いやです。」
桜がどこか機嫌を欠いた声を出すと杏寿郎は驚いた顔をしながらも眉を寄せた。
杏「仕方が無いだろう。景色なら後ろの窓で見てくれ。退く気は無いぞ。」
「け、景色が見たいわけじゃ…、とにかく隣に座ってください。嫌なんです。」
杏「駄目だ。言う事を聞いてくれ。」
「では私も立ちま、っ」
桜が立ち上がろうとすると杏寿郎はその肩をぐっと抑えた。
杏寿郎の瞳はピリついた色をしていた。
杏「何を考えているんだ。ここは端の席で俺が前に立てば人目に触れないだろう。何故其処から立とうとする。何故わざわざ人目に触れようとする。」
桜は杏寿郎の誤解を解きたいと思ったが同時に嫉妬をしているとも思われたくなかった。
「それは…杏寿郎さんが目立っているからです…!」
そう言われた杏寿郎は目を丸くした後、後ろを振り返った。