第87章 穏やかな生活
同じ時間、杏寿郎も事情聴取を受けていた。
だが、机に縛り付けられたまま立ち上がった事については皆が首を傾げ、先に進めなくなってしまっていた。
取り分け大事な部分ではなかったが、事件の経緯を事細かに書かなくてはならない報告書を書く手は止まってしまう。
そして報告書を作成していた警察官はペンを一度置くと、同室に居た同僚と視線を合わせる。
警「……では、実践してみていただけますか?」
警「その燃やされた男の顔は見ていないんですね。」
「はい。ただ体格は良い方だっ、」
―――ダァンッ
質問に答えている途中で大きな音と共に『…おぉ!!』という男の興奮した声が聞こえてきた。
(………杏寿郎さん何かしたのかな…。)
警「何だろう……すみません、少し見てきますね。」
「は、はい……。」
杏「あの机はもっと大きく重かったですが同じ要領で起き上がりました。」
警「…………これはそのまま書くしかないのか…。」
警「すごいな……アスリートではないんですよね?警官になって頂きたいな…。」
杏「俺はただの教師です。今までも、これからも。」
杏寿郎が微笑みながら爽やかにそう言ったところで桜の部屋に居た警官が戸を開ける。