第87章 穏やかな生活
「ううん!キッチンにはあまり入らせないように気を付けてるの。」
それを聞くと全く料理をしない自身を棚に上げて勇之が眉を寄せる。
勇「杏寿郎君、少し桜に負担が偏っているのではないのか。2人とも同じ時間に帰宅するのだろう?」
杏「それが…やらせてくれないのです。」
その言葉を聞いて勇之が首を傾げていると、桜は小芭内に聞いた幼少期の "コンロで焼き芋事件" から、最近の "コンロでキャンプファイヤー未遂" について話した。
杏「しっかりとレシピなどの勉強はしているのですが そもそも家で火を操る方法を書いてあるものが少ないんです。強火、弱火、などの表記ばかりでして。なので最近はキャンプ系のサイトで火の勉強をしていますが最初の時点で桜さんに正しくないと指摘されてしまいます。料理は本当に難しいのですね。」
勇「………………そうか……君がただ桜に任せっきりにしたい訳でないことはよく分かった。……キッチンには極力入らないように。」
杏「………よもや。」
杏寿郎の口角は上がっていたが口から出てきた "よもや" はとても弱々しかった。
―――
その土曜日の午前は昨夜の続きで事情聴取が行われた。
勇之と由梨は送り出す際に酷く心配していたが、桜は細田を正しく裁いてもらおうと積極的に質問に答えた。
気を遣ってか必ず柔らかい雰囲気の女性の警察官も同席してくれ、すぐに冷えてしまう桜に温かい飲み物を出してくれた。
幸い使った凶器に関しては7年前も行方知れずであった為、レコーダーと共に有力な証拠となった。