第87章 穏やかな生活
杏寿郎もすぐに桜の肩を押し返そうとしたが頭が痺れるとその手が躊躇してしまう。
そうして杏寿郎にしては珍しくもたついている間に桜が杏寿郎の下半身に手を伸ばした。
そこは桜の思い通りの反応をしていた。
結局その日は強引な桜に杏寿郎の方が振り回され、口を押さえて声を押し殺しながらも布団の中でこっそりと事に及んだのであった。
―――
杏「満足したか。」
散々煽られたり、耐えたり、音や声に気を付けたりと気疲れした杏寿郎は少し恨めしそうな声を出した。
それを分かっていながら桜は眩い笑顔を向ける。
「はい。今日を "再び誘拐されそうになった日" ではなく "犯人を討ち果たしためでたい日" として昇華できそうです。」
そう言われては杏寿郎も叱るに叱れず、黙って頭を撫でた。
杏「…………そうか。君がそう思えたのなら…良かったのだろう。だがもうこれより先は何があってもこの家ではしないからな。よく覚えておきなさい。」
「はい。」
言葉の割にその優しい声色に桜は愛おしそうな顔をして微笑んだのだった。